留学にいったという事実が自信になるし、その後の人生の選択肢を広げるきっかけになる。
名前 : 水谷 一翔
留学開始時の学年 : 修士1年
留学開始時の所属 : 電気電子系 電気電子コース
現所属 : アカデミック(大学教職員,博士生)
留学プログラム : ダブルディグリープログラム
留学先 : 台湾, 新竹市
所属先 : 国立交通大学
留学時期 : 2018/09/03~2019/8/15
留学期間 : 11ヶ月
過去の留学経験 : 超短期派遣プログラム(アメリカ西海岸)
総費用 : 〜100万円
奨学金 : 四日市市科学教育奨学金
受給金額 : 月10万円 × 12ヶ月= 120万円
東京工業大学・台湾国立交通大学ダブルディグリープログラムに参加。このプログラムの特徴は(頑張れば)2年間で東工大と交通大の修士の学位が取得できることである。つまり、留年せずに就職や進学などのスケジュールをこなせる。
留学先ではInternational college of Semiconductor technology (ICST)に所属していた。この学科はその名の通り半導体技術について学ぶ学科で多数の留学生を受け入れている。授業はすべて英語で行われるが、内容は東工大で受けたものとほぼ同じだったので、授業で苦労するということはなかった。
大学内には大学所有のクリーンルームと、国立の研究機関のクリーンルーム(これがかなりデカい!)がある。なので、正直言って半導体プロセスでできないことはない、といえるほど研究環境は良い。しかしながら、クリーンルームに入るための安全講習や、プロセスマシンを使用するための講習が多く、実験を始めるまでに時間がかかる(自分の場合は研修に半年ぐらいかかった)。もし、今後誰かが交通大に留学することがあるなら1年半以上の滞在を勧める(その場合冒頭で述べた2年での学位取得ができなくなるが、留学を有意義なものにするためには致し方ない)。
留学で得られたのは海外でもやっていけるかもしれないという、「根拠のない自信」が一番大きい。留学を終えた今でも英語は苦手で、研究成果を残せたとは言えない。しかし、台湾で1年間なんとか生活できて、病まずに帰国できたという事実が最も大きな財産だと思う。
友達との台湾旅行。台湾は国土が九州ぐらいなので、高速バスだけでも十分全国を回れる。年末に友達と行った高雄、台南で貧乏旅行はなかなか楽しかった。
現地で働く日本人グループでの飲み会。交通大学がある新竹は、別名「台湾のシリコンバレー」と呼ばれ、半導体企業が多く集まる地域でもある。日本は昔から半導体産業が盛んなので(現在はプロセスマシンと材料が強い)、多くの日本人が駐在している。交通大学にも複数の日本人教授が在籍しているので、日本人同士のつながりが広く、強固。言葉の通じない異国の地で、母国語で飲み会ができるというのはかなり心強い。
あとは現地で食べる日本食!台湾は地理的に日本と近く、比較的親日国家であるため、日本食のみせが結構ある。注意しなければならないのは、台湾人オーナーの日本食レストランは味が台湾人に合わせてかなり薄味なので、日本人には物足りないことが多い。日本食を味わいたい場合は日本企業のチェーン店(吉野家、くら寿司など)か、日本人がオーナーの店(台北には日本人がオーナのラーメン店が多数ある)に行くことを勧める。
交通大がある新竹市で1番人気のラーメン屋「麺屋浩」 台湾には日本人がオーナーのラーメン屋がいくつかある
太魯閣国立公園の風景
観光地としてお馴染みの九份 ここは日本かと思うほど観光客が多い
英語
留学前
[目安: TOEIC 600~695] 旅行くらいならそこまで困らないし、専門関係もなんとなくわかる。
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留学後
[目安: TOEIC 700~795] 長い文でも70%くらいわかるし、論文とかも単語さえ分かればまあまあスラスラ読めちゃう。
英語が苦手なので語学は本当に苦労した。台湾に到着した日に、現地の空港で交通大の学生に引率してもらってバスで交通大に向かったが、隣に座った留学生が言っていることが全然わからなくて絶望した。初めの1か月は授業には行っていたが、研究室の学生とコミュニケーションを取るのが苦痛で講義室と寮の往復だった。
克服した具体的な方法は特に思い出せない。とりあえず授業行って、英語がわからないながらもなんとか研究室の学生とコミュニケーションを取るうちに、なんとなく聞こえるし伝えられるようになっていた。留学を終えるころには英語に対する恐怖はなくなっていた。
正直自分の留学は大成功だったかと聞かれたら、全くそんなことはなかった。これといった成果を出したわけでもないし、語学力が飛躍的に伸びたわけでもない。なんなら留学中毎日日本に帰りたいとさえ思っていた。
それでも自分が留学してよかったと思えるのは、「根拠のない自信」を得たからだ。留学内容はどうであれ、台湾で何とか1年間生活できたという事実こそが最も大きな財産であり、この「根拠のない自信」の源泉なのだと思う。
もう一つ留学してよかったと思える理由は、「留学しなかった」という後悔を今後の人生でしなくて済むからだ。自分の性格上、もし留学しなかったら、「学生時代に留学の一つでもしていれば」と絶対に後悔していたことと思う。
今、少しでも留学に行きたい、留学に行かなければ後悔すると思う人がいれば、ぜひ留学に行くことを勧める。留学にいったという事実が自信になるし、その後の人生を広めるきっかけになると思う。少なくとも自分はそうなった。